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【コメント】渡辺夏目さん/聡子の部屋 第9回「コロナ・パンデミックとジェンダー ―日本と韓国の社会政策の差はなにか?」

更新日:2023年6月13日

2020年9月16日 (水) に開催された「聡子の部屋」第9回「コロナ・パンデミックとジェンダー ―日本と韓国の社会政策の差はなにか?」のゲスト

渡辺夏目(共同通信 記者)さんに感想コメントをいただきましたのでご紹介します!

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渡辺夏目さんの感想コメント

 新型コロナウィルスの感染拡大第2波に見舞われていた韓国は現在、小康状態を保っている。一方、コロナ防疫をめぐり新たな議論も起こっている。第2波の要因となったのは保守系教会による反政府デモだったのだが、集会開催自体を封じ込める対応に保守系メディアだけではなく、リベラル系新聞も危機感を示し始めた。大規模デモが行われるソウル中心部の光化門広場で10月初旬、韓国警察が警備車両を隙間無く並べる「車壁」を設置し、開催を阻止しようとした。この光景は、韓国人の気持ちをとても複雑にさせるものだった。車壁は文在寅政権以前の権威主義的な政権時代のシンボルだからだ。市民がこれにノーと声を上げて誕生した現政権で、再び車壁が登場し戸惑うのも無理はない。コロナ禍が長期化する中で、集会の自由と防疫をどのように両立させるべきか。韓国の中ではすでに論争になっている。これは一部の人が集団感染の危険性を無視してデモを煽っているという話ではない。公権力行使の正当性をきちんと判断し、自分たちの主権を守らなければならないという強い意識の表れなのだ。そのエネルギーの原動力として、市民の手で民主化を達成させたという歴史の重さをあらためて思った。


 ジェンダーにおける議論でもそうだ。「聡子の部屋」で話題に上った朴元淳・前ソウル市長のセクハラ疑惑問題が明るみになった際、彼が名高い人権派弁護士であり市民活動家だったがゆえに韓国社会は大きく揺れた。与党側の被害者軽視や二次被害が起こったものの、被害者側に寄り添うべきという声が早々に大きくなり、与党の態度を改めさせた。しかもそれは、永山聡子さんが指摘したように韓国の若者たちがきちんと怒ったからだ。さらに最近、人気歌手グループBLAKPINKのミュージックビデオ(MV)をめぐり批判が巻き起こった。メンバーが看護師姿で登場する場面について、韓国の医療従事者の労働組合が「看護師を性的対象にしている」と抗議したのだ。看護師らが医療現場でのセクハラ問題を改善するために長年闘争してきたにもかかわらず、MVは問題を助長するものだと指摘した。また、SNSではこの騒動を受けて「#stop_sexualizing_nurses」(看護師の性的対象化を止めろ)などのハッシュタグが広がった。制作側は「特定の意図はない」としたが、当該部分を削除して差し替えるという。人権派弁護士だろうと、超人気歌手グループだろうと相手取って、性暴力被害者を支持する声が広がるのが今の韓国なのだ。


「聡子の部屋」で、韓国は「#MeToo」しやすい社会になったのかという問いが出たが、若者を中心に「#WithYou」の価値観が育ってきたとは言えるだろう。#Metooのしやすさとは#WithYouの土台を整えた先にあると思う。そして#WithYouはチャリティー活動ではない。性暴力被害者の訴えと自分自身を地続きのものとして捉え、社会が解決しなければならないという意識から来るものだ。韓国は家父長社会のため日本同様に性差別が根強く残っており、フェミニズム運動を行うことは決して容易ではない(韓国フェミニズム界も一枚岩ではなく、世代間の葛藤も生じている)。それでも自分たちが価値観を変えようと連帯を呼び掛け、動く若者たちが常にいる。彼らから、共感するだけではなく沈黙を破らないと、つまり#Withyouがないとジェンダー問題はいつまでも解決しないというのを学んだ。日本でも、性暴力被害者に寄り添う声が当たり前のように広がる社会になってほしい。自戒を込めて記すが、沈黙を破らないといけないのは被害者本人なのではなく、私たち一人一人だ。


「コロナ・パンデミックとジェンダー ―日本と韓国の社会政策の差はなにか?」

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